真夜中の手紙

深夜テンションで書いた文章なので大目に見てください。有益なことは何一つないですがオタクとしての熱量だけはあります。

マシーン日記は成人向けオズの魔法使い? マシーン日記感想

 

・ネタバレしかない

・2021年版しか観ていない

・2021年版の戯曲本は読んだ

以上のような横山担の浅い感想と考察です。

 

 

 

オズの魔法使いとマシーン日記

 

横山さんがレンジャーで「オズの魔法使いを知っておくとよりいいよ」というようなことを話していた*1ので、小学生の頃一度観たきりだったDVDを再び観てみることに。


オズの魔法使いについて、ストーリーを知らない方もいるかと思うのでざっくり説明すると、

主人公ドロシーが竜巻に巻き込まれたと思ったら夢の国オズに着いた。帰るにはエメラルド・シティに行って魔法使いに会わないといけない!道中で出会ったカカシ、ブリキ人形、ライオンとドロシーの4人の冒険物語。

といったところ。

 

脳のないカカシ(ミチオ)、心がないブリキ人形(ケイコ)、勇気がないライオン(アキトシ)っていう人物設定がそれぞれぴったりで驚いた。特にブリキ。

カカシとライオンは入れ替えても成り立つかな。さすが兄弟。

 

コーラすらまともに飲めなくて、鎖で繋がれている状態から脱しようともしないミチオ、

気持ちを語る場面もあるのに何を考えているのか全くわからないケイコ、

家族という形に固執するアキトシ。

 

サチコのドロシー要素はなんだろうな、と考えてみると、その世界に巻き込まれて他の3人を同じ場に集めたところなのかも。

 

サチコはドロシーになりたかった=主役として脚光を浴びたかった人だけど、果たしてサチコは主役になれたのか。

今回のマシーン日記の主人公はミチオだけど、ミチオがサチコを強姦したのがそもそもの始まりで、サチコがいなければケイコがツジヨシ兄弟電業にやってくることがなかったんだとすれば、物語を動かしたのは間違いなくサチコ。

 

ミチオは動けない、動かない人だから、対照的だった。ミチオは自分とサチコを似ていると言っていたし、社会性の低さ?からいじめの標的*2になってしまうような面は似ていると思う。ただミチオにはサチコのような主役願望が感じられなかった。兄に繋がれていることを良しとして、プレハブから出られないからと他人の家を盗聴して他人の人生をエンタメとして消費しているミチオ。

 

他の3人は不可解なりに主体性があったけど、彼には主体性が感じられなかった。*3周りで起こることに受け身になっているだけで、ドロシーに助けられる前のカカシそのもの。

4人の中で1番まとも(もとい1番まし)なのはミチオだし、狂気の中にあって1人正気を捨てられない受け身の彼だから、この物語の主人公になり得たのだろうな。

 

ドロシーが自力で学んで、踵を3回鳴らして帰る*4っていうのがオズの魔法使いのラストだったけど、

ミチオは自分の足で踏み出すことも踵を鳴らすこともできなくなって終わるんだなあと思った。

 

ドロシーが学んだことは、大切なものは家にあること。そして彼女の望みは故郷に、家族(伯父さんと伯母さん)の元に帰ることだった。

 

オズの魔法使いが自分の住む家および家族の大切さを子どもたちに伝える作品なんだとすれば、家族に固執するアキトシとそれをなんだかんだ受け入れてるミチオの関係は、その危うさを狂気的に表しているのかもしれない。

 

オズの魔法使いとマシーン日記を観て1番ハッとなったこと、カカシは藁でできているから火が怖いらしい。じゃあマシーン日記ラストのあれは……

いろいろ考えられて面白いなあ。

 

4人しか登場しない舞台*5で、エメラルド・シティのような目指す場所もないし(強いて挙げるなら欽ちゃんの下層階級……じゃなかった、仮装大賞は目指す場所といえるかもしれない)

なにより魔法使いも魔女もいないし、成人向けオズの魔法使いとするのはだいぶ乱暴。

 

でもオズの魔法使いから夢と希望とファンタジーを引き算してセックスと暴力を足し算したらマシーン日記になる、かも。

オズの魔法使いはドロシーのみていた夢の話だった。

マシーン日記も夢ならばどれほどよかったでしょう……(Lemon)

 

成人向けオズの魔法使いとしたのは、

オズの魔法使いDVD 冒頭に「子ども心を忘れていない人と子どもたちにこの映画を捧げます」という文言があったことと、

マシーン日記を観てこれ絶対子どもには観せられない舞台だな!と思ったから。

 

DVD冒頭には「この物語は40年*6に渡り子どもたちに夢を与え続けてきました」という言葉もあった。

マシーン日記は夢のかけらもあったもんじゃないよ!!



ストーリーについて

 

夢も希望もないバッドエンドだったけど、じゃあ彼らにとっての幸せは何だったんだろう。

 

ケイコが来ないであのまま3人で暮らしていられたらよかったのかな。

 

ミチオとアキトシはとりあえず兄弟一緒にいられればよかったんじゃないかと思う。ミチオはアキトシのせいで就職が出来なくなって、現在進行形で監禁されてるんだからもっと兄を恨んでもよさそうだけど、彼からはあまり兄への恨みを感じなかった。

温かい家族には全く見えなかったのに、離れようとしない2人。ジャングル風呂の頃はありふれた仲のいい兄弟、家族だったんだろうか。

 

サチコはどうだろう。

主役になりたくて、DVされても強姦されても結局それを受け入れているように見える彼女は、ただ悲劇のヒロインぶりたかったのかなとも思うけれど、そうやって陶酔することが自分を守ることに繋がっていたのかなとも思う。 

 

アキトシを殺してミチオと2人で逃げられていたらどうなっていたかな。皿回しでミチオを食わせてやってただろうか。観ている時は「逃げちゃえよ!2人で逃げちゃえよ!」と思っていたけど、アキトシがいない状態では2人の幸せは成り立たなかったかもしれない。

 

オズの魔法使いの登場人物のように、どこか欠けた者、もっと言えば歪な人間同士が3人なんとか収まってやってきてたのが、歪かつ物理的にも精神的にも力の強い1人がやってきたことでいよいよ崩れたのでは。

 

ケイコは正直幸せになってほしいと思えないし、当人が幸せになることを望んでいるとも思えないので考えないことにする。

 

しかしケイコは中学の先生で担任もしてたってことは道徳も教えてたんだよな……

彼女にとって道徳なんて1番理解し難い科目だと思うけどどうしてたんだろうか。そもそも何故教師になろうとしたんだろう。わたしが彼女の周囲にいたら絶対止めるが…………



演者さんについて

など舞台に関する諸々の感想を。

 

4人だけの舞台、かつセンターステージで360°どこからでも観られるようになっているから場所の変化もない舞台なのに、全く単調に感じなかったのがすごい。一瞬も飽きなかった。

演者さんの力と話そのものの面白さはもちろんのこと、小道具やセットや音楽や照明の力だろうなあ……

 

Over the Rainbowと共にステージが回り、4人がその場で佇むシーンはオルゴールのような綺麗さだった。




アキトシ役の大倉孝二さんは最初から最後までずっと面白くてさすがだった。

わたしはMIU404を熱心に視聴しているので、大倉さんのイメージはちょっとひょうきんでちょっと変な人、だった。

 

今回もそのイメージ通りではあるんだけど、ちょっとどころかだいぶ変な人だし、狂気と暴力が加わって怖さと面白さで観てるこっちがハイになりそうだった。

トイレから蘇るシーンは悲鳴出た。

 

それを上回る怖さだったのがケイコ役の秋山菜津子さん。

自分の無知さゆえ、ちゃんと認識してお芝居を拝見するのは今回が初めてだったのだけど、ものすごくパワーがあった。本当に手から何か出してたんじゃないか?

 

ケイコの何考えてるんだかわからないマシーンぶりの説得力。

そして登場シーンのインパクト。あれでUberやってて通報されなかったのかな……

ビジュアルも声も演技も最強だったなあ。

 

サチコ役の森川葵ちゃんは個人的に1番の衝撃だった。

葵ちゃんはあんなに可愛くて明るい雰囲気なのに、サチコはずっと下向いておどおどして喋るとイタい、あんまり関わりたくない女の子だった。

サチコが唐突に歌い出したり踊り出したりするのも、彼女がやると不思議とハマっていた。いい歌声とダンスだったな〜また観たいし聴きたい。

 

サチコが森川葵ちゃんじゃなかったら、もっと暗くておどろおどろしい舞台になっていたんじゃないかなと思う。あのはっちゃけぶりがあったから、幸せな話じゃなくてもまた観たいと思える舞台になったんじゃないかな。

 

そしてミチオ役の横山さん。

もちろんこの舞台は彼目当てで行っているので、こんな面白い舞台に出会わせてくれてありがとう!という気持ち。舞台しんどいのに受けてくれてありがとう。

 

鎖で繋がれている役だからずっと出ずっぱりで、着替えまで客前で行うという。しかも周りは全部観客に囲まれてるから幕が上がってからずっとお芝居をしていないといけないという。想像するだけでしんどい。

 

ものすごい痩せていて心配になる気持ちとその線の細さに美を見出す気持ちが喧嘩した。

ただでさえ年齢不詳の横山さんは今回痩せてる+金髪でもう少年の風貌だった。お肌綺麗ね……

 

横山さんがミチオをやることについては、ご本人や大根さんのインタビュー、ライターさんの記事で書かれていたことが全てだと思う。

 

大根仁が衝撃作『マシーン日記』の主演に横山裕を起用したワケ(週刊SPA!)

https://news.yahoo.co.jp/articles/907949516959ae945f0a10389d83b7869924f0eb

 

 

本当の支配者は誰か? 横山 裕が『マシーン日記』で挑んだ正気と狂気の臨界点 https://tokyo.whatsin.jp/628259

 

横山さん個人のインタビューや大根さんとの対談は他のステージ誌などで読める。

このブログをここまで書いたところで雑誌を読み返したら、自分の感じ方と横山さんの言葉が重なっていたところがあって、提供してくれたものを自分なりに受け取れたのかなと思えて嬉しかった。

 

リンクを貼った上記2つは読んでいてにやにやしてしまった。自担が褒められているのを自分のことのように喜んでしまいがち。

 

観劇した1オタクとしての感想は「なんかすごかった」に尽きてしまう。

それを具体的にどうすごかったのか整理しようとしてこんな文章を書いているのだけども。

 

こういう時に見た目に言及してしまうのはオタクの業という感じで嫌だけど、言わずにいられない。

横山さん演じるミチオの2時間の衆人環視に耐えうるビジュアルの美しさと、露わになる身体の綺麗さたるや。

 

強姦なんていう身勝手な欲望の極みみたいなシーンから始まって、性欲も食欲も強そうに見えるのに、ともすれば周りの勝手に振り回されるだけの全く無欲の人にも見える。

 

透明感と不透明さが同居しているというのか、穢れと純真が混ざり合っているというのか……

横山さんのミチオにはそういう不思議な魅力があった。

 

Smooth Criminalはもうアイドルじゃん。

1日中プレハブで繋がれてるのによくそんな機敏に動けるな!?

 

カーテンコールで大倉さんの肩に捕まって挨拶してたのかわいかったな〜

薄い身体にだぼだぼの作業着を着ていたのも萌えだった。



作業着といえば、サチコとケイコが工場で再会するシーンで、サチコがオレンジ、ケイコが紫の作業着を着ていたのは、真逆感の表現だったんだろうか。

 

サチコの衣装は普通っぽいのもあってかわいかったな。こき使うジーンズもワンピースも好き。

サチコのスクール水着姿を見て、「えっこれ追加料金払わないで観ちゃっていいんですか?」と思っ……ごめんなさい。おみ足が眩しかった。

綺麗な人はどこもかしこも綺麗なんだなあ。

 

スクール水着をはじめとして各々がインパクトある衣装を披露する中、繋がれたミチオだけずっと同じ、代わり映えのない服装でステージの中央にいた。



あくまで変わらずそこにいたミチオが、この舞台にわたしたち“見えない観客”を引き寄せたのだと思う。



おわりに

 

大した内容もないのに5000字以上書いてしまった。ちょっとしたレポートの字数。



コロナ禍での上演ということでいろいろ先行き不透明な中、よく東京楽までやってくださったなと思います。作り手側のみなさんには感謝してもしきれないです。素晴らしい舞台をありがとうございます。

 

序盤の公演が中止になってしまったのはもちろん残念だけど、悪いのはウイルスなので謝るべき人なんて誰もいません!!

 

観ているだけでお腹が空いたので、演者さんのエネルギー消費量は凄まじいと思います。横山さんもちゃんと食べてください……からだだいじに……

 

京都公演も無事に走り切れることをお祈りしています。



 





 

*1:Johnny's Web内連載関ジャニ戦隊∞レンジャー 2021/1/21更新

*2:社会性が低いからいじめてもいいなんてことは絶対にないが、そういう道徳性はこの舞台には存在しない

*3:劇中で1番主体性があったミチオは冒頭のサチコを強姦した場面かもしれない。サチコによれば最終的には合意だったらしいが……

*4:戯曲本にはサチコがケイコに殺される直前に『サチコが踵を三回鳴らす』とあった。驚いた。本と実際の劇はいくつか相違点があり、また観劇の際にはいきなり殺されたことにびっくりしすぎてそれどころではなかったので劇中でやっていたかどうかはわからない。誰か教えてください。

*5:正確にはマツザワ君と福島ハルヲもいるのか。あれ誰の声?

*6:オズの魔法使いの映画が製作されたのは1939年なのでもう82年前。そんなに古い作品だったとは。